
姫路市のよつば歯科・小児歯科院長の橋本です!
ブログをご覧いただきありがとうございます。
「みにくいアヒルの子」という童話をご存知でしょうか? 最初は周囲から “みにくい” と言われたアヒルが、実は美しい白鳥だったという物語です。このお話は、成長の過程で一時的に見た目や評価が不安定でも、最終的には本来の姿へと羽ばたくことを教えてくれます。
実は、歯科においても同様の現象が見られます。顎の成長や歯の移動の過程で、見た目が「以前より悪くなったように見える」時期があります。この期間は、見た目の変化により不安に感じるご家族も少なくありません。
このような見た目の不調和を、歯科では「みにくいアヒルの子の時代」と呼んでいます。成長と治療の過渡期に現れるこの段階は、最終的な機能的・審美的改善に向けた重要なプロセスの一部です。
学術的にも、このような成長期に見られる一時的な不正咬合や見た目の変化は「transitional malocclusion」や「ugly duckling stage」と呼ばれており、正常な成長発育の一過程であることが示されています(Broadbent, 1937; Baccetti et al., 2005)。
本記事では、5歳から7歳くらいのお子さまを対象としたマイオブレースによる小児矯正と、将来的なインビザラインによる第二期治療を通じて、この “見た目の変化” をどう理解し、どのように前向きに受け止めていけるかをご紹介します。
小児矯正の流れと「みにくいアヒルの子の時代」
小児矯正は2段階で考える
よつば歯科・小児歯科では、小児矯正を次のような二段階で考えています。
第一期治療(5〜10歳頃):主に顎の発育を正常に導き、歯が並ぶためのスペースを確保する目的で行う治療です。マイオブレースと呼ばれるマウスピース型の装置を使用し、口呼吸の改善や舌の位置、飲み込み方などの筋機能訓練も併用します。
第二期治療(12歳以降):永久歯が生え揃った段階で、必要に応じて歯並びや咬み合わせを最終的に整える治療です。インビザライン(透明なマウスピース矯正)を用いることで、目立たず快適な治療が可能になります。
第一期治療の途中に現れる「みにくいアヒルの子の時代」とは?
第一期治療の途中では、以下のような変化が一時的に起こることがあります:
- 歯と歯の間にすき間ができる
- 一部の歯が傾いて見える
- 顎が前に出たように見える
- 口元のバランスが変化する
これらはすべて、成長のための一時的な「過渡期」のサインです。マイオブレースによって正しい発育が促されている証拠でもあり、実は非常に前向きな変化なのです。
成長過程の「一時的な不安」をどう乗り越えるか
お子さま本人の感じ方
この年代のお子さまは、まだ見た目に対して強いこだわりは少ないものの、周囲の反応に敏感です。兄弟姉妹やお友だちからの何気ない言葉に影響され、「なんか変だって言われた」と気にすることもあります。
そのようなときは、「今は変化の途中だから、将来もっときれいになるんだよ」と、親御さんが優しく声をかけてあげることがとても大切です。
保護者のサポートがカギ
小児矯正は、本人の協力と同じくらい保護者の理解とサポートが重要です。とくにマイオブレースは、毎日の装着やお口のトレーニングが必要なため、ご家庭での励ましが大きな支えとなります。
お子さまが「なんで毎日これやらなきゃいけないの?」と感じたとき、親御さんが「将来のきれいな歯並びのためだよ。一緒にがんばろうね」と言ってあげるだけで、やる気がぐっと変わってきます。
マイオブレースで目指す「白鳥の未来」
マイオブレースは、単なる歯並びの治療ではありません。お口全体の使い方や呼吸、姿勢を整えることで、お子さまの健やかな成長をトータルにサポートします。
マイオブレースがもたらす効果
- 正しい鼻呼吸の習得
- 舌の位置と飲み込み方の改善
- 顎の成長促進
- 永久歯が並ぶスペースの確保
これらはすべて、「美しい歯並び」だけでなく、「健康的な体づくり」にもつながります。
インビザラインによる第二期治療へ
第一期治療が完了し、永久歯が生え揃った後は、必要に応じて第二期治療を行います。当院では、見た目が気になりにくく、取り外しができるインビザラインによるマウスピース型矯正を採用しています。
これにより、学校生活や部活動にも影響が少なく、思春期の繊細な心にも寄り添った矯正治療が可能となります。
おわりに:成長を信じるということ
「みにくいアヒルの子の時代」は、誰にでも訪れる “成長の途中” です。今はまだ完成形ではないかもしれません。でも、正しい治療とサポートがあれば、お子さまはきっと美しい白鳥のように羽ばたいていきます。
よつば歯科・小児歯科では、お子さまとご家族が安心して矯正治療に取り組めるよう、丁寧な説明とサポートを心がけています。もしもご不安なこと、ご質問があれば、いつでもお気軽にご相談ください。
お子さまの笑顔の未来に向けて、私たちと一緒に歩んでいきましょう。
参考文献
- Broadbent, B. H. (1937). A new X-ray technique and its application to orthodontia. The Angle Orthodontist, 7(2), 45–66.
- Cunningham, S. J., Hunt, N. P., & Feinmann, C. (2001). Psychological aspects of orthognathic treatment: A review of the literature. International Journal of Adult Orthodontics and Orthognathic Surgery, 16(2), 159–165.
- McIntyre, G. T., & Mossey, P. A. (2003). Orthodontic treatment in the early mixed dentition: a review of the literature. European Journal of Orthodontics, 25(2), 103–109.
- Baccetti, T., Franchi, L., & McNamara, J. A. (2005). The timing of early treatment of Class II malocclusion: a review. American Journal of Orthodontics and Dentofacial Orthopedics, 128(3), 292–303.